「売上○○円を超えたら法人化すべき?」
——結論は“売上ではなく利益と人件費・社会保険・消費税の設計”で決める、です。
個人⇄法人の損益は、
1)事業の稼ぐ力(利益)、
2)人を使うか(役員報酬・従業員)、
3)社会保険加入、
4)消費税、
5)信用・資金調達
の掛け算で決まります。
本記事では“境界線の見つけ方”を、数字の“考え方”ごとガイドします。
1. まず押さえる「個人 vs 法人」の本質差
個人事業の強み
- 帳簿・申告が軽く、青色65万円控除が使える
- 社会保険は原則任意(国保・国年)。負担が読みやすい
- 利益がそこまで大きくないうちは、総コストが低めに着地しやすい
法人の強み
- 役員報酬の分離により、個人側は給与課税(給与所得控除 等)へ
- 経費化の幅(退職金、家族に給与、福利厚生 等)が広がる
- 社会的信用・資金調達・取引要件で有利
- 利益が十分に出ていれば、実効税率を抑えやすい
法人のコスト(見落としがち)
- 住民税均等割(赤字でも固定負担)
- 社会保険の会社負担(人を雇う・役員報酬を出すなら原則必須)
- 申告・労務の事務コスト上昇
2. 境界線は「利益」を起点に設計する
フロー(考え方の順番)
- 当期利益(= 売上 − 経費)を見積もる
- 役員報酬で“個人側”へどれだけ振り分けるか案を作る
- それぞれの税・社会保険を概算
- 個人の青色控除や控除群が消える影響を加味
- 消費税(課税・免税/インボイス対応)の影響を上乗せ
- トータル負担(税+社保+外部コスト)が個人より軽いかを比較
3. “ざっくり境界線”の目安(考え方)
営業利益が概ね 700万〜1,200万円/年レンジから、法人化シミュレーションの“打ち合わせに入る”のが一般的な体感です。
※家族構成・控除・役員報酬設計・社保加入有無・消費税の状態で前後します。
- 利益が小さい(〜500万円)
個人の青色控除・基礎控除の恩恵が大きく、個人のまま有利な場面が多い。 - 利益が中位(500〜900万円)
どちらでも設計次第。役員報酬に落として実効税率を下げる余地が出る一方、社保負担で逆転することも。 - 利益が大きい(900万円〜)
役員報酬・退職金・家族給与など法人の引き出しが効きやすく、法人有利に傾く場面が増える。
補足:“売上”目安(2,000万・3,000万等)だけで判断しないこと。
原価率・外注比率次第で同じ売上でも税負担は全く変わります。
4. モデルケースでイメージ(※あくまで考え方の例)
ケースA:ひとりフリーランス(外注ほぼなし)
- 事業利益:800万円
- 家族:配偶者・子1(配偶者は収入少)
- 消費税:課税(インボイス対応)
個人のまま
- 青色65万+各種控除が効く
- 国保・国年(社保は任意)で負担一定
→ 手取りは安定。事務コストも最小。
法人化(役員報酬 600万円、会社利益 200万円)
- 個人:給与課税で控除形状が変化
- 会社:法人税は軽めだが社保(会社負担)が上乗せ
- 均等割・専門家費用も発生
→ 社保負担の増加で逆転する可能性。法人化の旨味はまだ薄め。
→ ただし取引先要件(法人限定)や信用が重要なら検討余地。
ケースB:外注活用型(チーム化志向)
- 事業利益:1,000万円
- 外注先複数・将来は雇用も視野
- 資金調達や大口案件で法人格要求あり
法人化メリットが立ちやすい
- 役員報酬で個人側の税率を最適化
- 将来の雇用・社保加入を前提に“ちゃんとした箱”を作る
- 銀行・大手取引の信用面
→ 総負担はトントン〜やや有利でも、拡大余地と信用でプラスが大きい。
ケースC:利益1,500万円超、家族への給与も可能
- 役員報酬+家族給与+退職金設計の引き出しが活きる
実行組み合わせ次第で法人有利が明瞭
→ この領域は法人前提での最適化へ。
5. 見落としNGの「3つの壁」
1. 社会保険の壁
法人は原則社保。役員報酬を上げるほど会社負担も増加。ここで逆転しやすい。
→ 役員報酬は**“税と社保の合算”で最適化**する。
2. 消費税の壁
課税事業者で仕入税額控除が効く/効かない、免税の有利不利、インボイスの要否で損益が変わる。
→ 2年後の課税・特例・簡易課税も踏まえて年跨ぎ設計を。
3.赤字でも固定負担の壁
法人は赤字でも均等割(住民税)、士業費用・事務コストが発生。
→ 景気変動リスク込みのキャッシュフロー計画が必須。
6. チェックリスト:法人化を検討すべきシグナル
- 直近2期の利益が安定して700万〜1,200万円レンジ
- すでに法人でないと取れない案件がある / 取引信用が必要
- 将来雇用を前提に、社保整備と制度運用をしたい
- 設備投資や退職金制度など、法人の器を使いたい
- 資金調達(融資・補助金)の選択肢を広げたい
→ 1つでも当てはまれば、法人化シミュレーションに入る価値があります。
7. 失敗を避ける“決め方の作法”
- “売上”ではなく“利益”起点で見る
- 役員報酬のダイヤルを回し、税+社保の合計で比較
- 消費税・インボイスの影響を翌々期まで織り込む
- 個人の青色控除・医療/生保・住宅ローン控除の消失/変化を加味
- 信用・調達・採用等の“非金銭価値”も評価
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